「永遠の０」と日本人
小川 榮太郎 著
「風立ちぬ」という大東亜戦争の前史、「永遠の０」という戦史、「終戦のエンペラー」という
戦後占領史が、まるで三部作のように揃い踏みすることになる。それぞれの映画への、私
の評価はともかく、いづれも、総力で作られた力作だ。
「永遠の０」
試写会を見て、期待は大きく裏切られた。失望したと言うより、見終わっての感想は、憤りに
近かったのである。
ところが、注意深く見ると映画「永遠の０」は、現代的なヒューマンドラマ風の展開と科白を
ベースにしながら、映画全体の構造としては、見事なまでにあの戦争を生きた軍人の勇姿
を捉えている。映画「永遠の０」の孕むこの矛盾が、本書の知的冒険の起点だった。
「風立ちぬ」
宮崎映画はとびきり美しい。それは世界で最も優れたファンタジーの一つであろう。
「戦後日本」というファンタジックな子宮に守られ、宮崎映画は、そうした問いに直面せずに
夢を見続けることができた。
つまり、戦後日本の平和という政治的ファンタジーの中で、それに対応し、そのイデオロギー
を祈りと愉悦によって美化する神話 ーーそれが宮崎映画なのだ。
「終戦のエンペラー」
注意深く見ると、見れば見るほど、奇妙な映画なのである。
「日米関係の戦後」ほど、偽善だけでできたすれちがいの歴史はない、この映画のすべて
が戯画だ。私にはそう見える。
概して、日本の歴史作家たちは、その後も、主に明治維新までを題材とし、大東亜戦争は
扱おうとしない。特に日本人の立場からこれを謳い上げようとする試みは、ほとんど見られ
なかった。これは、ＧＨＱのプレスコードの毒が、日本人の骨の髄まで浸透している典型的
な事例にほかなるまい。そこに登場したのが、「永遠の０」だった。
【 「永遠の０」と日本人 小川 榮太郎 著】【本書Ｐ３６ 歴史上の大量虐殺ランキング】
３つの映画の批評部分のみを抜粋しましたが、戦中戦後の日本を論じています。
特別攻撃隊の意義、成果、戦術、美学なども評論しています。特攻隊の成果はほとんど
なかったというのは、戦後アメリカがあまりに恐れたためのプロパガンダに過ぎず、実際
には多大な戦果を挙げたことをデータと共に論じています。
「風立ちぬ」の評論はすばらしいものでした。ジブリ映画のファンタジーは美しく、最も優れ
ているとした上で、それは歴史・国家・政治・経済・戦争を排斥し、現実から逃げることに
よってのみ成立すると評しました。ジブリ映画に違和感があったため、共感しました。
著者の小川榮太郎さんは、昨年注目されました。著書、「約束の日 安倍晋三試論」
のなかで、亡くなった三宅さんと朝日新聞の若宮啓文主筆とのやりとりを紹介。
三宅久之
「朝日は安倍というといたずらにたたくけど、いいところはきちんと認めるような報道は
できないものなのか」
若宮啓文 「できません」
三宅久之 「なぜだ」
若宮啓文 「社是だからです。」
若宮啓文
東大法学部卒業後、朝日新聞に就職。昨年、朝日新聞社を退社。わずか２週間後には、
韓国の大学教授になっています。
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