総理の誕生
阿比留瑠比 著
安倍やその同志たちの理念的・現実主義的な安全保障観や国際感覚、また連合国軍最高
司令官総司令部（GHQ）の影響から脱しようとする歴史観などは、自民党内でも明らかに非
主流派そのものだった。自民党は長年、保守政党は名乗っていても、実のところは思想性な
ど関係なく現状追認と既得権益保護をモットーとする政党だった。
米ソ冷戦下に米国の核の傘の下で庇護され、五五年体制の中で社会党と馴れ合っていると
きには、その方がうまくやれたのかもしれない。
全くと言っていいほど”ぶれない”ことが、安倍という政治家の特徴である。己の”信念”や”誠”
を売りにする政治家は多いが、過去の発言をたどると現在と大きく食い違っていることのほ
うが多い。
現在も安倍は、靖国に再び参拝するともしないとも言わないことで、中国に対する「靖国
カード」を保持している。日本の首相が靖国に参拝することは、中国にとっては執行部の対
日外交での失敗を意味し、国内統治上の大きな不安材料となる。そのことが、中国の対日
攻勢の一定の歯止めとなっているのだ。
安倍は、官房副長官時代から、外交に関するこんな考え方をよく語っていた。
「外交において、友好は手段であって目的ではない。友好は、そのときの状況を表す言葉に
すぎず、大切なのは国益だ」
そんな辛口の的場（順三）が、ほおをゆるめて安倍についてこう語った。
「安倍さんはよく祖父の岸信介さんに似ていると言われるが、岸さんは「両岸」とも呼ばれ
るほど左右に融通無碍だった。安倍さんの真っ直ぐさ、こうと決めたら頑固一徹なところは
岸さんというよりも、もう一人の祖父（元外相、安倍晋太郎の父）、昭和の吉田松陰と慕わ
れた元衆議院議員、安倍寛譲りだ。首相就任後しばらくは緊張してまだ硬かったが、安倍さ
んは自分らしく振舞ったほうがいい」
彼ら（保守派、安倍支持者）は安倍政権の成果よりも、足らざる点ばかりを数える減点主義
者に陥っていた。そして、保守の立場から安倍を批判し、失望を表明することが、安倍を正
道に立ち返らせることになるのだと主張した。
当時（第一次安倍政権）、私も「小泉さんには安倍さんがいたが、安倍さんには安倍さんが
いない」と何度も痛感したものだ。リーダーには、たいていの問題を任せられるナンバー２
と有能な補佐役が必要だが、安倍は独りに見えた。
安倍と一緒に仕事をしたい。安倍のために働きたい。周囲を引きつけ、そう強く思わせる磁
力が安倍にはある。リーダーの器と言っていいかもしれない。
「特定秘密保護法や安全保障関連法で、メディアにこれだけ叩かれながらも私の内閣の
支持率が高水準を保っているのは、インターネットのおかげだろう」
【総理の誕生 阿比留瑠比 著】
安倍総理の祖父といえば、元総理大臣の岸信介しか知りませんでした。名字が違うので、
母方であることは推測できます。そして、父方の祖父が安倍寛。調べてみました。
安倍寛（あべ かん） 1894年4月29日 – 1946年1月30日
安倍晋太郎は長男、安倍晋三・岸信夫は孫。1937年に衆議院議員に初当選。
Wikipedia
十五年戦争がはじまっても非戦・平和主義の立場をつらぬき、1938年（昭和13年）の第
一次近衛声明に反対し、1942年（昭和17年）の翼賛選挙に際しても東條英機らの軍閥主
義を鋭く批判、大政翼賛会の推薦を受けずに出馬するという不利な立場であったが、最下
位ながらも2期連続となる当選を果たした。議員在職中は三木武夫と共同で国政研究会を
創設し、塩野季彦を囲む木曜会に参加して東条内閣退陣要求、戦争反対、戦争終結など
を主張した。戦後、日本進歩党に加入し1946年（昭和21年）4月の総選挙に向けて準備し
ていたが、直前に心臓麻痺で急死した。
大政党の金権腐敗を糾弾するなど、清廉潔白な人格者として知られ、地元で「大津聖人」､
「今松陰（昭和の吉田松陰）」などと呼ばれ人気が高かったという。寛の長男である晋太郎
と娘との結婚話が持ち上がった岸信介は「大津聖人の息子なら心配ない」と述べたという。
二人の立派な祖父の血が、安倍総理に受け継がれています。
【総理 山口敬之 著】
著者の阿比留瑠比さんは、産経新聞記者。TBSの社員として安倍晋三を見てきた山口さん
と同じで、安倍ウォッチャーです。何人ものジャーナリストが安倍晋三に共感し、長きに渡り
見てきました。そのような政治家は、他にはいません。
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